第1章 共に感じる心地良さ
「はい、とっても気持ちいいですよ!」
「…そうか」
清都の答えに一言返すと、泰明は歩みを進めた。もう帰るのかな、と目で追った清都だったが、その行先に、また目を瞬かせる。泰明は橋を渡りきると、川辺へと降りて来た。彼はおもむろに履き物を脱いで裾を上げると、ちゃぷんと足を川水に浸けた。あかね達もまた泰明の行動に目を瞬かせ、反応を見守っている。
「…泰明殿…?」
「…冷たいな」
「はい。暑い夏でも川の水は冷たいので、涼むにはもってこいなのです」
「そうか」
「ひんやりして、気持ちいいでしょう?」
実践してみたということは、試したいと思ってくれたということだ。共感してもらえるかな、と清都は期待の声を込めて問いかけた。泰明はしばし沈黙した後、そうだな、と呟いた。
「川の水に足を浸けた瞬間、澄んだ心地がした。これが、気持ちいいということなのだろう」
ぱぁっと、あかねが笑い、清都もまた嬉しさで顔をほころばせた。手を差し出せば、彼は違和感無くその手をとった。ザプンと音を立て、清都は川の中頃へと泰明を招いたのであった。