第1章 共に感じる心地良さ
温暖化の進んでいないこの時代は、夏といえど現代ほど暑くはない。それでも着ている衣のせいもあってか暑さはあり、慣れないあかね達は少しばかり夏バテ気味になっていた。
「暑い…」
「暑いね…」
制服の上から着ているあかねと詩紋は特にだった。水干の上を派手に着崩し…もとい脱ぎ払ってタンクトップ一枚になっている天真はけろっとした顔で「そぉかぁ?」と返した。
「天真先輩は脱いじゃってるじゃないですか」
「お前も脱げばいいだろ?」
「…私は脱げないもん」
男子である詩紋はともかく、女子であるあかねはむーと口を尖らせた。詩紋も脱ぐのはちょっとと眉をひそめたので、天真は肩をすくめるしかない。
「なら、川にでも行く?」
「清都さん」
そこへ声を降らせたのは、藤姫への用事の帰りに様子見に来た清都だった。その隣には泰明もいる。どうやら邸の前で偶然鉢合わせたらしかった。
「足を浸けるだけでも気持ちいいよ。たまにやってる」
「やってんのかよ」
思わずツッコミを入れたのは天真だった。それに「だって暑いし」と返して、どうする?と問いかける。
「行きたいです!」
「僕も!」
「じゃあ俺も」
次々に手を上げる現代っ子達に頷き、清都は軽く首を後ろへひねった。
「泰明殿はどうされますか?」
「私はいい。暑いとは感じぬからな」
「そうですか…」
駄目元だったが、やはり付き合ってはもらえないらしい。神子の護衛もいるから大丈夫だと踏んだのだろう。泰明はそのまま土御門殿を後にして行った。その姿を見送り、清都らは川へと出かけたのだった。