第2章 おはなし
チュンチュンと雀の鳴き声が聞こえる。
それを合図に深く沈んでいた意識が徐々に浮上していく。
ゆっくりと目を開けると、部屋が日の光で明るく照らし出されていた。
『……っ』
私はゆっくりと身体を起き上がらせ、布団の上で胡座をかいた。
眠たさから目元を擦り、自身の眼鏡が無いことに今更気付いて、辺りを見回す。
『あった』
目を細めて眼鏡を探しあてる。
まだ頭は覚醒しきれていない。只ふと思ったのが、着ている制服のズボンがしわくちゃだということ。
ハンガーに掛けなくてはと今度はハッキリと見える視界で辺りを見回す。
『どこ、ここ』
と、思ったことを口に出すと、そう言えば自分は審神者を勤める事になったのを思い出した。
じゃあ此処は、本丸のどこかの部屋と言う事になる。
こんのすけも見当たらない。
障子を開けると、冷たい風が部屋に吹き込む。
部屋の外は花の咲いていない桜の木と小さな池があった。
『寒っ……。あー、腹減った』
私はどれくらいの間眠っていたのだろうか。
今、夕方位か?いや、でも外は明るい。
ボムッ!!
一人部屋で風に吹かれていると、突然背後で小さな爆発のような音が鳴った。
「主様!!」
『こんのすけ!』
急いで振り向けば、先程までは無かったこんのすけの姿。
「やっと、お目覚めになられたのですね!良かった」
『どうもご心配お掛けしました』
「本当ですよ!!大丈夫と自分で仰りながら、倒れてしまうなんて…!」
畳を叩きながら説教をするこんのすけに、私は思わず笑みを溢した。
すると、こんのすけは"何を笑っているのですか!!"と更に怒ったが、結局は"ご無事でなによりです"と耳を下げて言った。
『あ、そう言えば、今って何時位かな?この部屋、時計無いから』
「現在、卯二つ時ですね。現代で言うと、午前5時半から6時に至ります」
『そっかー。ん、それ朝じゃん。午後の間違いじゃなくて?』
「いえ、間違いでは御座いません。
主様が倒れてしまわれてから、今の今まで、ずっとお眠りになられていましたから。
陸奥守殿達も心配されていましたよ」
『マジか』
何やってんだよ自分。
初日から心配をかけてるし。後で会ったら、ちゃんと謝らないとなぁ。