LOVE*CHOCO*KISS‼︎ 〜HQバレンタイン企画〜
第18章 《及川》バレンタインデー・キッス
結局、部活の休憩中も女の子に囲まれて、みんなのチョコを渡すことができなかった。
部活後の今も、当然囲まれている。
この調子ならまだまだいるんだろうな。
ってことで、先に着替えを済ませて、もう一度体育館に戻ると、さっきまでの騒ぎは収まっていて…、
それどころか、誰もいない体育館で、及川先輩が一人サーブ練習をしていた。
…え、私が準備している短時間で一体何が起きたの?
なんて考えも一瞬で吹き飛び、及川先輩のまっすぐにボールを見つめる瞳、迫力、きれいなフォーム。
そのどれもに見とれていると、私の方へとボールが飛んできた。
早くて、きれいなまっすぐのサーブを私は両掌で受け止めた。
本当は腕で受け止めたかったけれど、私はもうバレーはできないから。
「あっ、ごっめーん!ケガない?」
「大丈夫です。」
「もー。及川さん待ってたんだよ?」
「え?…私を?」
「そ。」
私からボールを受け取ると、片腕にボールを抱えて、もう片手の掌を私に差し出した。
…欲深いなぁ。
「あぁ、これですね。」
そして、大量のチョコレートをその掌にのせた。もちろん、その数は多いから、掌に乗り切るわけがなくて、
パサッと切ない音を立てて落ちた。