LOVE*CHOCO*KISS‼︎ 〜HQバレンタイン企画〜
第11章 《及川》セカンドキス
不意に他人から明かされた真実に理解が追いつかなかった。
「あー! ホント、ムカつく! マジでクソだな」
一方的に吐かれる暴言に言い返すことも出来ないまま、ただ茫然と立っている俺の胸倉を掴みよせると、鼻先まで顔を寄せて、いつもよりずっと真剣な眼差しで俺を見つめた。
「オマエならナギを幸せに出来ると思ってる。だから、絶対泣かすなよ」
「岩ちゃん、それって」
「勘違いするな。黙ってたけど、俺はオマエよりも先に彼女出来てるし」
「は?」
急に緩んだ首回りの圧迫感に岩ちゃんの手が外れたことを悟った。
「まー、そういう事だ」
そういう事って? ツっこみ所はたくさんあるはずなのに、岩ちゃんは自分の言いたいことだけを言うとさっさと踵を返した。その岩ちゃんを追いかけようと、玄関にカバンを置いてドアを開けるとそこに立っていたのはナギだった。
「あ」
「あ」
二人の声が重なる。
今日はバレンタインデー。ナギがドアの前に居ると言う事がどういうことなのかを瞬時に理解した俺は、チョコレートを貰うよりも先にその体を腕の中に閉じ込めた。
「ちょっ! ちょっと!」
「ごめん、もう少しだけこのまま」
耳元で上がるナギからの抗議の声が聞こえていても、その体を離すことは出来そうにない。嬉しさと恥ずかしさで俺の心臓は、口から飛び出しそうなほど早鐘を刻み、かつてないほど顔に熱を集めている。
バレンタインデーと言う日を催促したのも、勝手に期待していたのも自分だと言うのに、いざその瞬間を迎えると今にもパニックを起こしてしまいそうになる。女子から何かを貰うということが初めてと言う訳でもないし、ナギから貰うのだって初めてなわけじゃないのに、今日は特別だ。
やがて落ち着いた鼓動に、そっとナギの体を離すと、少し困惑しているようで恥ずかしそうに頬をそめて俯くナギは、持って来ていた紙袋を俺の前に差し出した。