LOVE*CHOCO*KISS‼︎ 〜HQバレンタイン企画〜
第11章 《及川》セカンドキス
「自業自得……かぁ」
その言葉は恐らく、女子に対して愛想よくしてきた俺を指しているのだろう。好意を寄せられれば悪い気はしないけど、一度だって思わせぶりな態度を取った事は無い。初恋の相手に恋をしているのは俺だって現在進行形なのだ。
少し重い空気のままいつもの場所で岩ちゃんと別れようとすると、何故か岩ちゃんは俺の予定を確認した。
「及川!」
「ん~?」
「今日は家に居るんだろ?」
「まぁね。引っ越しの準備もあるし。バレンタインデーが終わるには未だ何時間もあるしね」
少し呆れたような苦笑いを浮かべると「じゃあな」と言ってさっさと帰って行く岩ちゃんの後ろ姿を少しだけ見つめて、コートのポケットからスマホを取り出してナギからの連絡が入っていないかを確認したが、新着の何かを告げるような通知は何も表示されていない。
電波が入ってないんじゃないか? なんて事を疑いたくなるけど、きっとコレが現実でやっぱり、本当に欲しいものは手に入らないのだと、ゆっくり息を吐くとスマホを握ったままポケットに手を突っ込んで、俺は今にも雪が降り出しそうな空を見上げて鼻を啜った。
「ただいま」
玄関のドアを開ければ温かな空気が外に逃げていく。それはまるで、掴みかけた何かが手をすり抜けていくのとよく似ている。
自室に行く前にカフェオレをと思ってリビングのドアに手を掛けようとしたら、突然インターホンが鳴り響いた。
「は~い……って、岩ちゃん?!」
バツが悪そうに立つ岩ちゃんは、ドアを少し大きく開けても中に入ろうとせず、大きな目を右往左往させると今度は真っ直ぐに俺を見つめた。
「絶対教えてやらねーと思ってたけど、アイツはいつだってオマエの分しか用意してなかったよ。中学に上がってから貰えなくなったのは、オマエに群がる不特定多数に埋もれたくないって思ってたからだ」