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LOVE*CHOCO*KISS‼︎ 〜HQバレンタイン企画〜

第11章 《及川》セカンドキス



小さい頃の約束――なんて忘れてしまったのかもしれない。俺が中学に上がる前までは、毎年バレンタインデーにはチョコレートを持ってきていたし、幼稚園の頃には大人になったら俺のお嫁さんになるんだって笑った。
そう、俺とナギが交わした小さな頃の約束。それは結婚するということ。

カチカチカチ――カレンダーに目を向けたままシャープペンシルの芯を押し出しては、仕舞っての繰り返しに、とうとうガマンがきかなくなった芯は三度目に微かな音を立てて折れた。
中学に上がってから突如終了したバレンタインデーを俺は理解出来ず、ナギに遠回しと言うにはあからさまな催促をしてみたが、返ってきた言葉は「一つぐらい減ったって良いじゃん」だった。
小さい頃はいつだって俺の後ろをついてきていたはずなのに、まるで「ココまでだよ」とでも言うように、背中を急にポンと押されて突き放された気がした。後ろを振り返っても、あの頃のように嬉しそうに笑うナギの姿はなくて、髪を揺らす後ろ姿だけが見える。追いかけようとしても足は枷が付いたように重くて、手を伸ばせば触れそうな背中を掴もうとしても、指先はいつも空を切った。
だから、ダメ元で一年前のバレンタインデーに逆チョコを決行したのだ。長期戦になる覚悟でいたのに、ナギからの返事はあっけなく「いいよ」の一言だけだった。
当然、部活に忙しい俺がデートをするヒマなんてそうそうあるはずもなく、定期オフも大抵はどちらかの家で勉強をするか、別々に過ごすかだ。そして、部活も引退してやっと恋人らしい時間が持てると思っていたら、今度はナギが生徒会を務める事になった。
三月一日の卒業式を終えれば、一週間と空けずに東京へ上京する。そう――カウントダウンは始まっている。始まっているけど、ナギは寂しがる様子も焦る様子もない。ふと、岩ちゃんと肩を並べて歩くナギの横顔を思い出して過ぎる不安と嫌な予感。もしかして、このまま自然消滅――。もしくは、俺が上京して久しぶりに帰省すれば、岩ちゃんと付き合ってるなんて事もありえるのだろうか? いや、二人ともそんないい加減な人間じゃない。勝手に想像したほんの少し先の未来を打ち消すように、俺はスマホの画像欄から二人で映った自撮り画像を引っ張り出した。

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