LOVE*CHOCO*KISS‼︎ 〜HQバレンタイン企画〜
第11章 《及川》セカンドキス
三人で居るとナギはいつも岩ちゃんとの方が会話は弾んで、あまり俺を見ることがない。カウントダウンは既に始まっていると言うのに、それを気にする様子もなければ、特に取り沙汰する事もない。恋愛感情へと変わって、疎かった昔と今じゃ違うと言うのに、あの頃より近いはずの俺たちの距離が遠く感じて、自信がなくなる。
俺が東京の大学に進学すると決めたのは、春高の予選が終わった直後だった。少なくとも、寂しがってくれる事に期待もしたし、もしかしたら女の子っぽい事も言ってくれるんじゃないかという期待もあった。だけど、俺の淡い期待は直ぐに打ち崩され結局は「おめでとう」の一言で終わった。
「じゃあ、またね!」
一人悶々としている間にいつもの場所にたどり着くと、ナギは俺たちに向かって手を振る。ダッフルコートのポケットから姿を見せた白い手を思わず掴むと、ナギの瞳が大きく見開いた。
「14日は空けておくから!」
分かっている。自由登校の俺と在校生のナギじゃ、縛られる時間が違うということくらい。不安半分、期待半分――あまりにも真剣な俺の眼差しから逃げるように、ナギが目を逸らした。やがて、背中に大きな衝撃が走ると、いつも通りの声が響く。
「クソ川、困らせてんじゃねーよ!」
ナギが何も言わないことを、迷惑だと解釈した岩ちゃんの助け舟。俺は、約束を確たるものに出来ないまま、岩ちゃんに引き摺られるように、その場を後にした。