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LOVE*CHOCO*KISS‼︎ 〜HQバレンタイン企画〜

第11章 《及川》セカンドキス



「おい、クソ川早くしろよ! 小鳥遊が待ってんだろーが!」
「ハジメ先輩、別にいいよ。及川が愛想振りまくのなんて今更じゃん」

一つ下の幼馴染みで俺の彼女……のはずなんだけど、なぜか俺を“及川”と呼ぶ。特に付き合っていることを隠しているわけではないけど、ナギのクールな性格はガチ勢の多い岩ちゃんのファンや、俺のファンから妬まれることはなく、世間一般でよく耳にする嫌がらせをされることも無い。いや、正しく言えば彼女という立場より、幼馴染みと言う間柄を認識されているのかもしれない。

「ゴメンね、向こうでコワーイ人が待ってるから」

俺を取り囲む女子を掻き分けて、十メートルほど先を行く二人の背中を追いかけようとしたら、肩を並べる二人がお似合いに思えてきて、走り出そうとした足は何かに捕らわれるように重くなる。そして、なにも見ないフリをして駆け寄った俺が二人に追いついたのは、門を潜る数歩手前だった。

「人気者はツライよね」

チラ、とナギの表情を盗み見るけど、特に気にした様子もなく、いつも通りの岩ちゃんとのやり取りをただ笑って見ている。恋人同士なんだって意識しているのは俺だけでナギにとっては幼馴染みの延長なのかもしれない。
俺がそんな気持ちになるにはいくつかの理由がある。その内の一つがコレだ。

「ナギ、生徒会の方は良かったのか?」
「今日は何にもないからね。ハジメちゃんは準備終わった?」

門を潜って、学校の外に一歩踏み出せば二人の呼び方は変わるのに、ナギが俺を呼ぶときはずっと及川のままな事に俺は不満で仕方がない。

「ってかさー、そもそも岩ちゃんには名前呼びなのに、なんで俺は及川なわけ? 及川さんでもセンパイでもなく及川ってこの扱いなんだろうね?」
「えー? 及川は及川でしょ」
「そーだけど! 昔は“徹にい”って呼んでたよね?」
「えー? そうだっけ、忘れた」

ケタケタと笑いながら、ダッフルコートのポケットに手を突っ込むと、まるでマフラーで口元を隠すように首を竦めたナギ。

「俺が温めてあげるのに」

そんな呟きはナギに届くことなく、乾いた風が攫っていった。

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