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LOVE*CHOCO*KISS‼︎ 〜HQバレンタイン企画〜

第9章 《黄金川》離れてもすきなひと



「あのな。そういうのちゃんと本人に言わないとダメだぞ。『すれ違い』ってのは大抵、そういう言葉足らずから起こるんだからよ。
俺も経験あるから、分かるけど。本音で話せなきゃ、それは本当に付き合ってるっていえないんじゃねぇか」

「でも、不安だから会いたいだなんて言ったら、ナギさんを縛ることになります。そんなワガママなこと、俺言えません」

「お前、俺にはワガママ全開なくせによく言うよ。それにもう本人に聞こえちゃってるから」

「え?」

二口先輩が後方を指さした。
ゆっくりとその先を見ると、さっきまでステージにあったナギさんの姿がそこにある。

ナギさんの目は、今はしっかりと俺を捉えていて、心なしか怒ったような顔をしていた。

「貫至くんのバカ! なんで来ちゃうのよ」

開口一番、ナギさんがそう言ったので、俺はまた視線を地面に落とした。

ほら、やっぱり会いに来てほしくなかったんだ。
さっきの俺の言葉も、迷惑だったに違いない。

俺の独りよがりで、ナギさんは来てほしくなかったのに押しかけて。

会いたくて仕方なかったけど、これでナギさんに嫌われてしまったら。

顔を下に向けているからか、重力で俺の目の奥から涙が地面に引っ張られそうだ。

コツコツと、ナギさんの履くヒールの音が近づいて、俺の目の前で止まった。
下を向いた俺には、赤いヒールの先しか見えない。

「……バカ!!」

そう言ってナギさんは俺の胸に飛び込んできた。

一瞬何が起こったのか分からなくて、目をぱちぱちさせてナギさんを見ると。

目があったナギさんは顔を真っ赤にさせて、すぐに俺の体に顔をうずめてしまった。

「……会ったら寂しくなるから、我慢してたのに……!」

俺のセーターに埋もれたナギさんからくぐもった小さな声が聞こえた。

今のが聞き間違いじゃないのなら、ナギさんも、俺と同じ気持ちだったってことだろうか。

「えっ、あの、ナギさん……」
「もう! 私だって寂しかったよ! 会えない分不安だったよ! 私だって貫至くんのこと、大好きなんだから……!!」
「ナギさん……」

くぐもった声は少し涙声になっていた。

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