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LOVE*CHOCO*KISS‼︎ 〜HQバレンタイン企画〜

第9章 《黄金川》離れてもすきなひと




ナギさんに会いたくて、ここまで来た。

だけど、どこか後悔している俺がいた。

同じ空間にいることが苦しかった。

ナギさんの出番が終わるのも待たずに、俺は出口に向かっていた。

「…お、おい、黄金?」
「スンマセン、ちょっと気分が」
「大丈夫かよ」

黙って出て行こうとした俺に、二口先輩が心配そうに付き添ってくれた。

「人に酔ったのか? ナギちゃん出てきたってのに元気なかったもんな。……水飲むか? 吐きそうならトイレ行けよ」
「大丈夫っす。ありがとうございます。……スンマセン、途中で抜けて」
「いや、俺は別にいいけど。気分良くなったら戻るか? まだナギちゃんの出番終わってねぇかも……」

二口先輩の言葉に、俺は力なく首を横に振った。
俺の返答がよほど予想外だったのだろう。
二口先輩は驚いた顔をした。

「は? 何、そんなに気分悪いわけ? 風邪でもひいたか?」

その言葉に、俺はまた首を横に振った。

「……ナギさん、来て欲しくなさそうだったんです」
「……今日の、ライブにか」
「はい。…でも俺、半年も会えてないし、いつ帰ってくるかも分からないってナギさんに言われて。無理やりにでもライブに行かなきゃダメだって思ったんです。

距離が離れてるから、そばにいられないし、電話越しで話すだけじゃ足りなかった。
遠距離になっても俺の気持ちは大きくなっていくのに、ナギさんはそうでもないような気がして、不安で」

初めての彼女で、勝手が分からないことがいっぱいあった。

どんなことをしたら喜ぶのか、どんなことをしたら嫌われるのか、全部手探りの毎日で。
それなのにいきなり遠距離になって、俺は不安でたまらなかったんだ。

だけど、夢に向かって頑張るナギさんに『不安だ』って直接言えない。

そんなこと言ってしまったら、ナギさんを縛ってしまうから。

言葉にして、ようやく自分の気持ちがハッキリしていった。

「それ、ちゃんと本人に話したのか?」

二口先輩の言葉に首を振るのは何度目だろうか。
俺が首を振ると、二口先輩は深いため息をついた。

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