LOVE*CHOCO*KISS‼︎ 〜HQバレンタイン企画〜
第9章 《黄金川》離れてもすきなひと
ああ、独りよがりだなんて思ってごめん。
ぎゅっとしがみついてくるナギさんの背にそっと腕を回して、優しく抱きしめた。
「…チョコレートも何も、私準備してない」
言ってくれたら用意したのに、とナギさんが悔しそうな顔で俺を見上げる。
チョコなんてなくても俺は構わないと答えると、だけどせっかくのバレンタインなのに、とまたナギさんは悔しそうな顔を見せた。
「俺はナギさんがいれば、それで十分っスから」
思っていることは、口にしなければ伝わらない。
だから最大限に気持ちをこめて、ナギさんにそう囁いた。
次の瞬間にはナギさんが耳まで真っ赤になったのを見て、俺は嬉しくてたまらなかった。
「あ、でもひとつだけ欲しいものがあるっス」
「? なに?」
今からでも間に合う? なんて小首をかしげるナギさんに、十分間に合いますと俺は笑って答える。
「え、なんだろ……」
ナギさんが俺を見上げたまま考え込み始めたので、俺はそのままゆっくりナギさんに顔を近づけた。
触れた唇は、きっとチョコレートよりもずっとずっと甘いもの。
チラチラと舞い始めた雪の中、俺とナギさんは互いのぬくもりを確かめるように口づけを交わした。
──fin──