LOVE*CHOCO*KISS‼︎ 〜HQバレンタイン企画〜
第2章 【SS】岩泉一のバレンタイン
「あの…岩泉くん、ちょっといい?」
今日何度目か分からない呼び出し。
2月14日、バレンタインデー。
及川宛のチョコレートを渡したい奴らに、朝から伝書鳩扱いされ、もうウンザリな放課後。部活に行こうとしたところを呼び止められ、溜息をつき振り向くと、そこには隣のクラスの小鳥遊がいた。
(クソッ…よりにもよってお前まで…)
本気なら本人に渡すのが筋だろうが。アイツは誰のチョコだろーがあのくっそ腹立つヘラヘラした顔で喜んで受け取るんだから。
「お前も及川か? ...こういうのは自分で渡せよ。」
常に他の女子に囲まれてるあのバカを見れば、まぁ確かに俺経由で渡したくなる気持ちは分からなくもない…。だけど小鳥遊のだけは、素直にそれが出来なかった。
「え…?ちょっと待って、ちが…」
「ワリィ、部活行くから。」
言い逃げするように言葉を吐き捨て背を向ける。
(好きな奴に自分宛じゃないチョコを渡されるとかどんな罰ゲームだよ…)
「待って!!!」
その場を去ろうとした瞬間、小さな手にそれを阻まれ、もう一度彼女の方に向き直る。視線を下げると、今にも泣き出しそうなのにキッと強い眼差しが俺を捉えていた。
「私がチョコ渡したかったのは、岩泉くんだから!!!」
突然のでかい声に、廊下にいた奴らが一斉にこっちを向く。状況を把握した奴らが、ニヤニヤ笑いながら「お?告白かァ〜?」なんて囃し立て出し、我に戻った小鳥遊は一瞬にして顔をリンゴみたいに赤く染め俯いた。
「ちょっと来い。」
彼女の手を取り足早に廊下を抜け屋上への立ち入り禁止の階段を上り、人目がないのを確認してようやく手を離す。
「ちょ、岩泉くん……走るの、早いよ…」
「あ、ワリィ!……というか、なんか、悪かった………勘違いして。及川にだとばっかり…」
「ううん。いいの。…あの、岩泉くん、好きです!!私の気持ち、受け取ってもらえる、かな?」
「……当たり前だろ。」
「え?」