第1章 アフロのカットは職人技
道場から威勢のいい掛け声が聞こえてくる昼下がり、俺はいつも通り縁側で居眠りをしていた。
だってこんな日に仕事するなんて、ちゃんちゃらおかしいでしょーや。見てくだせぇこのポカポカと眠気を誘う春の日差しを。
「おいいいィィ!!ちゃんちゃらおかしいのはオメーの頭だっつーのおおおォォォ!!何堂々とサボってやがんだテメーはァァ!!」
「うるせーなァ、土方さん。俺ァ今休憩時間なんでさァ。休憩中に休憩して何が悪いんだんだんハゲろ土方」
「ハゲろっつったか?!ハゲろっつったか今?!」
まったく、耳元でギャーギャーうるせぇこって。これだから血の気の多い上司の相手は面倒なんでさァ。
「ところで、俺に何かご用ですかぃ?」
俺がいる縁側は、隊の幹部達の私室がある棟だから、勤勉な土方さんが勤務中にわざわざこっちにまで来ることは珍しい。
「……あァ。が来てる。とっととその頭刈り取ってもらえ」
咥えタバコをガジガジと噛んで、土方さんは理不尽に飼い主に叱られた犬みてぇな顔をして言った。こめかみがピクピク動いているから、必死で気持ちを落ち着かせようとしてんだろうなァ。
まったく、とことん真面目なお人だ。そんなにクールキャラ守って何になるってんでしょーね。
「もうそんな時間ですかィ。やったー、早く姉さんに会いに行かなきゃー」
「去り際にまきびしまくのやめてくんない?!」
俺が投げつけたまきびしを器用に避けながら土方さんが叫ぶ。
「あっ、おい総悟!!ついでに終にも声かけておけ!あいつはいつも時間かかんだから」
「がってん承知しやした」
俺は極めつけの唐辛子煙玉を投下してから、廊下を走っていった。