第5章 シガンシナ陥落〜トロスト区攻防戦
調査兵団が壁外調査から戻ってきた合図を知らせる鐘が鳴り響く。
その鐘の音は、兵士達にとって生きて帰って来れた事を祝福すると共に、また多くの犠牲を生んでしまった事を兵士達へと改めて思い知らせるのであった。
今回の壁外調査でも犠牲者が絶えず、生き長らえたが今後の生活に支障をきたしてしまうような負傷を負った者も数多くいた。
「これだけしか帰って来なかったのか……」
「皆んな食われちまったんだろうなぁ……」
「わざわざ壁の外に出るからこうなるんだ」
壁外調査を行う度に多くの犠牲者を出しても、その見返りを得られずにただただ死人を出しているだけだと思っている街の人々は調査兵団に対して冷たい目線を向けていた。
「モーゼス⁈モーゼス……!!」
今回の壁外調査に出撃していたのであろう兵士の母親が自分の子供の無事を確認する為にキースの元へと向かう。
「あの……、息子が、モーゼスが見当たらないんですが、息子は何処でしょうか、」
「モーゼスの母親だ、持ってこい」
その言葉に状況を察したモーゼスの母親は呆然とする。
そんな彼女の元に届けられたのは、何かを布で包んだモノだった。
「え……?」
包まれたモノが何か確認するべく、モーゼスの母親は布の包みを開ける。
そこにあったのは、息子の物だと思われる血に濡れた右腕だった。
「……!ああぁ……っ!!」
「それだけしか、取り返せませんでした……」
息子の死を確認してしまった母親はその場に泣き崩れる。
「でも……、息子は、役に立ったんですよね……?」
「……ッ!」
「何か直接な手柄は無くても……!息子の死は人類の……、反撃の糧になったんですよね……ッ⁈」
それは、我々調査兵団にとって最も残酷な言葉だった。