第1章 ふわふわオムレツ【菊丸英二】
私が御盆に料理を並べテーブルへと運ぼうと振り返ると、目の前に立っていた英二に御盆を奪われる。
クスッと笑いウィンクをすると、口元を本当の猫の様に歪めて笑う。
菊丸「力仕事は俺の役目、でしょ?ほらほら、早く食べよー」
そう…こういう優しくて頼りになる所も、彼の魅力の一つだ。
魅力の一つ一つに触れる度、私は胸が締め付けられたかの様に何度も恋に落ちる。
お茶を用意してコップと一緒に持ち、テーブルへと向かった。
菊丸「よぉぉし、じゃあ…いっただっきまーっす!」
手をパンッと打ち鳴らす様に合わせ、スプーンを手に取る英二に不安が募る。
もし、美味しくなかったらどうしよう。
もし、英二に嫌われてしまったら…そう思うと正直食べて欲しい様な欲しくない様な複雑な心境だった。
スプーンでオムレツを切る様にして掬い、口に頬張る。その様子が、まるでスローモーションの様に私の目には映った。
あまりの不安に瞼をぎゅっと閉じた、次の瞬間。
菊丸「お…いしい…」
いつもの癖付いた話し方では無く、吐息と共に自然と漏れた様な言葉だった。