第1章 ふわふわオムレツ【菊丸英二】
菊丸「ねぇねぇ、まーだぁ?」
名前「もう、英二ったら」
キッチンに立つ私に、待ちきれないとばかりに後ろから抱き付いてくる恋人。
赤い髪に青い瞳、頬には白い絆創膏。少し鼻に掛かった可愛い声の、そんな男の子。
今日は日曜日。学校もお休みで、私は彼の家へと出向いていた。
それもこれも、昨日の夜に突然掛かってきた彼からの電話によるものだった。
遡る事14時間前…土曜日、夜9時。
菊丸「こんばんは、起きてた?」
受話器から聞こえてきた声に自然と胸が踊り、声のトーンも上がる。
名前「うん、まだ起きてた。どうしたの、何かあった?」
もしかしたらデートのお誘い?なんて、内心では胸が騒ぎ立てる。
声を聞いているだけでも高鳴る鼓動。いつも学校で会っている筈なのに、電話を掛けて来てくれるだけでこんなにも嬉しい。
なんて前に友人に話したら、惚けか!と額に軽いチョップを受けた。
嬉しさで頭が一杯になりかけた頃、受話器から待ち望んでいた声が再び鼓膜を擽る。