第2章 つまさき立ちの恋【跡部景吾】
私は恋をしている…。
どれだけ背伸びをしても、どれだけ手を伸ばしても届かない。住む世界がまるで違う、話した事も無い…そんな人。
中学の入学式で入学生代表として舞台に立った時から、あの高慢さの中にある確かな自信と真っ直ぐな信念がこの心に突き刺さった。
それと同時に、あの真っ直ぐ前を見詰める青い瞳に…恋をした。
高校生になってからも、彼の後ろを振り返らない真っ直ぐさは変わらない。
女子からの彼への人気も、年々高まる一方だった。
女子A「ねぇねぇ、跡部様って恋人出来たってマジ?」
女子B「あー…それね、何かマジらしいよぉ。あーあ、私は今日から何を糧に生きて行けば良いのよぉぉっ!!」
恋人…出来たんだ…。
あの跡部君の恋人だ、きっと本当に素敵な子なんだろうなぁ…。
こんな何処にでも居そうな平々凡々な私だ、彼に釣り合わない事くらい分かってるし隣に並ぼうだなんて筋違いだという事もとっくに気付いてる。
同じクラスになり、こうやって毎日彼の姿を見る事が出来るだけで幸せだ。
少なくともそれくらいには、諦めもついている。
女子達の噂話が聞こえているのかいないのか、彼は相変わらず平然とドイツ語で書かれた書物を読んでいる。