第5章 5話
相澤と彩夏が出会って2年ほど経った時の事だった。
何の変哲もない、ただのありふれた日常になるはずだった日。
その時は突然やってきた。
いつもは部屋で読んでる本を、庭で読もうとして相澤とリビングルームの前を通りかかった。
リビングルームから父と母と姉の声がした。
(実)
「俺の唯一の汚点はあの子だよ。あの子さえ居なければ...現乃がいて良かった。」
(再子)
「なんでもっと無個性だってこと早くわからなかったのかしら...分かってたら産まなかったのに。
現乃は私たちの誇りよ。」
(現乃)
「無個性ってどんな感じなのかなー
私には理解できないや。
おじさんとかおばさん連中も言ってるもん。」
(実)
「個性がないとわかった時点で分家に押し付けるべきだった。」
(再子)
「ちょっと...あなただけ恥ずかしいみたいな言い方やめてくれる?私親戚連中から散々小言くらったんですから。」
(現乃)
「え、そうなの?まぁあの人達なら絶対言うよねー
あ、お父さん聞いて?最近の敵の事なんだけど─────」
その時、薄々感じていたものが確信に変わった。
私はいらない子だったのだ、と。
生まれてこなければよかったのに。
(彩夏)
(みんないなくなっちゃえばいいのに。)
そう思い、
想像した。
その瞬間、父と母と姉は死んだ。
彩夏の個性はないのではなく、想像性が欠落していたため発動出来なかったものだった。
相澤は一瞬何が起こったか理解できなかったが個性で彩夏の暴走を止めた。
警察に連れていかれ、色々診断された結果。個性は“想像”だと診断された。
このヒーロー一家殺人事件は連日マスコミを騒がせたが、国が犯人である彩夏のことをもみ消した。
その代償として国から監視された。
国からの重圧に耐えれたのは相澤の存在が大きかった。
初めて、自分の目を見てくれた。
初めて、自分の話を聞いてくれた。
初めて、自分と遊んでくれた。
たった1人の大事な人だから。
国にヒーロー免許を取れと言われれば免許だってとった。
国にヒーローになれと言われればヒーローにだってなった。
それも全て相澤のため。