第4章 4話
(彩夏)
「...爆豪くんはオールマイトとブラスマン...がきっかけでヒーロー目指してるんだって。
おかしいよね。
私にとっては最悪の父さんだったのに、世間ではすごいプロヒーローで。一族からは尊敬の当主として見られてて。
私がおかしいのかな。」
彩夏はそう打ち明けた。
(相澤)
「...そりゃ、あの人───“実(みのる)”さんは実際すごかったろ。」
ヒーローチャートの1位をオールマイトと競り合うほど人気の高かったブラスマン。3位との差は明らかだった。
オールマイトほど背は高くはないががっちりとした体型で一見近接戦闘かと思いきや、実現という強個性をふんだんに使う。
また、オールマイトと同じ様にファンのことはすごくすごく大切にしていた。
それ故に人気が高かった。
(彩夏)
「そうだけど、こんなに評価が180度違ったらもう...笑うしかないよね。
こんな、ただ一族の当主を引き継いだだけの小娘と、世間からも皆からも羨望の眼差しを向けられている人とどっちを信じたかな。」
と彩夏は自嘲した。
(相澤)
「...皆がお前の敵になったとしても。俺は、彩夏を信じる。
...絶対だ。」
だからそんな顔するな。と相澤は彩夏の頭を撫でた。
(彩夏)
「...ありがとう。消太にぃ。」
そう言った彩夏の目には涙が溜まっていた。
(相澤)
「ほら、明日も早い。早く寝ろ。」
そんな彩夏の涙に気づいていながらも、触れてほしくないことは重々承知していた相澤は何も言うことなく早く寝るよう促した。
(彩夏)
「分かった、早く寝る。おやすみなさい...」
(相澤)
「おやすみ。」
もう、あの子がここに来てからはや10年が経とうとしている。
当時のおどおどしたところは今ではもう見受けられない。
初めて会った時と180度変わった。
彩夏と実さんはよく似ている。
相澤家の直系の者は茶髪に茶色い目をしている。そこから外れれば外れるほど、黒くなっていく。
(相澤)
「はぁぁぁ...」
相澤のため息が誰もいない、広いリビングに響き渡った。