第4章 4話
相澤消太がいつも家に帰るのは10時を過ぎた頃だろうか。
だが、今日の帰りは時計の短針が8を指す前の事だった。
ドアを開け玄関に入るといつもは彩夏が「おかえりなさい」と声をかけてくれると言うのに、今日は出てきてくれない。
いつもならする料理の匂いも、包丁の音も何かを焼いている音さえ、何も無い。
(相澤)
「...彩夏...?」
廊下からリビングへと通じるドアを開ける。
そこには暗い部屋が広がっていた。
部屋にいるのだろうか、1度カバンをソファーに置いてから行ってみるか。と思いソファーに近づくと制服のまま寝ている彩夏がいた。
(相澤)
「...おいおいおい...こんなところで寝るな...」
小言を漏らし、彩夏の顔をよく見た。
真っ白の肌。
ぱっちりとした二重の目、外国を思わせるような金色に近い茶色の瞳。
瞳に影を落とすほど長いまつ毛。
明るい茶髪。
...とても、整っていると思う。
どのヒーローが見ても、
「流石は相澤一族のご令嬢だ」と、言うほどに。
血は争えないのだ。
だが、目元を見ると普段の彩夏の肌の色より少し赤色がかかっていた。
泣いたのだろう。
いつからだろう。彼女が俺の前で泣かなくなったのは。
自問自答を繰り返すばかりでこれと言った答えは見つからない。
相澤は長く伸ばしてある彩夏の髪の毛を触った。
泣いていたということは...今日の戦闘訓練そんなに悔しかったのか...
まぁ、プロヒーローがヒーロー免許も持っていない高校生に負けたのだ。
相当悔しかったはず。
相澤は一人で悶々とと考えていた。
(彩夏)
「zzzzzzzzzzzz.....
んぅぅうんっ?
あ...消太にぃおかえりなさい。
ごめんね、寝ちゃってた。
すぐご飯の支度するから、待ってて。」
(相澤)
「ただいま。ご飯は今日は俺が作る。まだ寝てろ。」
相澤は彩夏が悩みは自分からは言い出さないことをよく知っている。
相澤が聞かないないと、答えないのだ。
逆に言うと、聞くときちんと話してくれる、ということだ。