第1章 1話
ガチャッ
ギー
ある高層マンションの一部屋に中学生の女の子が1人
キッチンで晩御飯の準備に励んでいた
そこに、同居人であろう男性──草臥れた格好をした──が鍵を開け玄関に入ってきた
(彩夏)
「おかえり、消太にぃ」
彩夏は“消太にぃ”と呼んでいる男性がいる玄関に走っていき、挨拶をする
(相澤)
「...あぁ、ただいま」
そんな彩夏に相澤は普段よりも落ち込んだ表情で言葉を返した
それが分かったのは恐らく彩夏だけで、普段から陰気臭いオーラを纏っている相澤は誰にも気づかれやしないだろう
しかし、このまま玄関に突っ立っている訳にもいかないため
(彩夏)
「ご飯、食べよ?」
と、相澤をリビングへと向かうよう促す
(相澤)
「あぁ、悪いな。」
(彩夏)
「大丈夫」
いつも通りの言葉を交わす
いつもと違うのはこの言葉の後に相澤が話し出したことだった
普段であればふかふかの大きなソファーに寝転び、五分ほど休んでから夕ご飯にはいる
しかし、今日は直ぐにダイニングの椅子に座った
(相澤)
「お前に.....特別推薦が来た。
雄英のだ。」
突然の話に彩夏はついていけず、混乱する
(彩夏)
「は?今なんて言った...?
私最近耳悪くってさ...特別推薦がなんとかって聞こえた気がしたんだけど。」
(相澤)
「合ってる。それも、雄英の校長直々の特別推薦だと。」
彩夏は驚きと混乱で空いた口が塞がらなかった
(彩夏)
((いや、確かに雄英の教師達とは仲良しだし、根津さんともとても仲がいい
それとこれとは別だろう))
彩夏が混乱している間に相澤は黙々と今日の夕ご飯に用意された煮物を口いっぱいに含んでいた
そんな相澤をみつめ、彩夏はふぅーっと長い息を吐き、
しょうがない、ここにいる男の人は紛れもなくプロヒーロー
イレイザーヘッドだ
と、思い直した