第9章 9話
その場を去った彩夏は浅めの深呼吸をしつつ、このままクラスに戻れば2回戦を棄権したことが早々にバレてしまう。そのため、関係者立入禁止区域に足を運んだ。
どうせ、2回戦には出場出来ないのだから。という思いであの部屋に向かう。
朝目の深呼吸がいつのまにか過呼吸を起こしており、早くあの部屋に着きたいがために周囲の確認をせず、スキャナーにカードを読み取らせ暗証番号を打ち込み、部屋に入ろうとする。ドアが閉まる瞬間、誰かの手がそれを阻んだ。
(爆豪)
「てめっ!そこは立入禁止区域だろーが!!!確認しろや!!!!」
一瞬、誰が飛び込んできたか分からず混乱する彩夏。爆豪がいつもより小さな声で叫んだからだ。恐らく爆豪も爆豪で叫ぶと彩夏と自分が他人に見つかり、説教されると踏んでのことだろう。彼なりに配慮したつもりだったのだ。
(彩夏)
「…?!か、え?!勝己?!は???」
しかし、彼の配慮関係なしに彩夏は驚いて大声─いつもより少し大きめな声だが─を出す。
───ガチャン
と、重たいドアが閉まる音がする。