第9章 9話
(エンデバー)
「ただ、お前のことを思って言ったことだ。それだけは覚えておけ。」
(彩夏)
「…肝に銘じておきます。」
では、これで。と言おうとした瞬間
(轟)
「お前、そこで何やってんだ」
声のした方を見るとそこには緑谷との2回戦を突破した、ボロボロの轟が少し離れた廊下から彩夏たちの方へと声をかける。
逆光になっているだろう、と彩夏は轟の方へと目を向け、その場を静かに立ち去ろうとした。
(轟)
「誰かと思えば相澤か。クソ親父に捕まったのか。」
顔はバレていないと踏んでいた彩夏は轟に声をかけられたことにびっくりする。彩夏は狼狽えた表情を見せたが、それも一瞬のこと。すぐさま、表情をコントロールし自らの思いを悟られないように笑顔を貼り付けた。
返事をしないのも逆に怖い怪しまれるので、曖昧に返事をする。
(彩夏)
「まぁ、そんなとこ。」
(轟)
「クソ親父が引き止めて悪かったな。」
(彩夏)
「有意義な時間を過ごせたようだから大丈夫。
私もう行かなくちゃ。轟くんまた後で。」
そう言い終わった後に、エンデバーの方へと足を向ける。
彼の近くを通る時にエンデバー、と静かな声で彩夏は言い放つ。
(エンデバー)
「む」
(彩夏)
「今後の活躍、楽しみにしているわ」
(エンデバー)
「お前に言われなくともNo.1への道を着々と進んでおるわ」
ならよかった、と微笑んだ彩夏はクラスメイトが待つ部屋の方へと廊下を歩いていった。
それを轟はじっと見つめ、なにかを言いかけた口をつぐみ自分の父であるエンデバーの方へと目線を移動させた。