第9章 9話
長い長い廊下を抜けてたった一つの扉から1番離れたこの部屋に、彩夏のプライベートな空間が広がっている。他の生徒と離れるための所謂逃げ込む部屋だ。
その部屋に入るには指紋、虹彩のチェック、そして暗証番号とカードキーが必須となっておりこの部屋に自ら入ることが出来るのは彩夏、相澤、そして校長のみだ。他は彼らに招かれない限り絶対に入れない部屋となっていた。
特段大事なものが置かれているわけではない。
ただ、彩夏が1人で仕事が出来る、誰もいない空間が必要だった。
あと5mほどでその安息の地に踏み入れることが出来る距離の時に「ちょっと、無視とか何様なの?」と声をかけられる。
声をした方に顔を向けると叔母と叔父が立っていた。彩夏は内心「最悪、捕まった…」と思っていたがこの連中にそんな顔を向ければひとたまりもないので無理に微笑み返す。
(彩夏)
「お久しぶりですね、お元気ですか。叔父さん叔母さん」
(麗子)
「私達を体育祭に招かずに何やってたの?」
(朋之)
「しかも俺たちまで入場検査させられるし」
腕を組みながら彩夏のことを見下すような体勢をとる。
まるで、彩夏のことを社長だとは認めていないというような。