第9章 9話
マイクの言葉を他所に、相澤は1週間前の事を思い出した
その日は毎年恒例、普通科などがヒーロー科の敵情視察に行く日の夜であった
彩夏は2人で使うのには少々大きなテーブルに焼き魚やお味噌汁、ご飯、煮物...などきちんとならべている
相澤は2人がけソファには座らず、そこにもたれるように床に座っていた
相澤は昔から何度も配膳くらいは、と手伝いを試みたが彩夏が一切許さず、今では配膳が終わるまで手持ち無沙汰な状態であった
ほどなくして、彩夏が消太にぃ、お待たせ。と声をかける
彩夏と相澤が揃っていただきます、と言い
相澤がお箸を持ち上げたと同時に彩夏は口を開いた
(彩夏)
「消太にぃ...私やっぱりきちんと体育祭でるよ」
(相澤)
「...きちんと...?」
相澤は彩夏の言葉を1度では理解出来ず、聞き返す
(彩夏)
「今日、ね
普通科の子がヒーロー科編入を狙ってるって言いに来てたの
そんな中で私、予選落ちとかしてヒーロー科に在籍するのは違うと思うから
1番目立たない方法で且つ1番最初にゴールに辿り着いてみせるよ
だから、見ててよ」
まぁ、一番最初にゴールに行ったとしてもゴールはしないけど
と、彩夏は付け加える
相澤は最初目を丸くして驚いでいたが、すぐにいつもの表情に戻り
(相澤)
「あぁ
怪我だけは、するな」
いつもであれば『頑張れ』と言えていたが、
何故か今日は素直に『頑張れ』とは言えなかった
そんな相澤を他所に彩夏はそんなことを気にすることなく、焼き魚の骨をちまちまと取り除くのに励んでいた