第6章 6話
(彩夏)
「ねぇ、何をそんなに心配しているの?」
緑谷は相澤を担架に乗せようとしている途中何度もオールマイトの方を確認していた。
蛙吹と峰田はオールマイトのバックドロップに興味津々で彩夏の言葉
聞こえていないようで、聞いていたのは緑谷本人だけだった。
(緑谷)
「え?!いや...別に何も...」
(彩夏)
「そう?でも、さっきから何度もオールマイトの方確認してるよね?
ヒーローは私情を挟まず一般人の重傷者や、か弱い人々から先に救出しなければだめでしょう?
でも、まだ君はヒーロー科の生徒であってヒーローじゃない。
今は、私情を挟んでも良い時なんじゃない?
先生を運ぶのに4人は多すぎる。合理的にいきましょう。」
(緑谷)
「...うん...」
彩夏の言葉にあまり反応を示さない緑谷に彩夏はそれから、と付け足した。
(彩夏)
「これだけは覚えておいた方がいい。
隣にいる人が必ずしも明日隣にいるとは限らない。
自分の力を信じても、信頼に足る仲間を信じても...結果は誰にも分からない。
私達が出来ることと言えば悔いが残らない方を自分で選ぶ...くらいだよ。
さぁ、早く選んで。」
(緑谷)
((知ってるんだ
通学途中は毎日リアルタイムのヒーローニュースを見てるんだ。
ここにオールマイトがいないって話の時に13号先生がひっそりと立てた三本指はきっと活動限界のことだ。
きっと使い過ぎたとかの話だ。
僕だけが
僕だけが
知っている
ピンチ))
(緑谷)
「蛙ス...っユちゃん!」
(蛙吹)
「頑張ってくれてるのね。
なあに緑谷ちゃん。」
(緑谷)
「相澤先生運ぶの代わって...!
相澤さん、僕選ぶよ!」
(彩夏)
「うん。怪我、しないようにね」
緑谷の言葉にふわりと微笑んだ彩夏は全力で走って行く緑谷を見送り蛙吹と共に相澤を入口まで運んだ。