第3章 トリップ
蓮「…………」
……また夢を見た。
夢の内容は決まって両親の夢だ。
あたしは首に下げてある勾玉に触れた。
(自分を捨てた親から貰った勾玉をいつまでも大切にしてるなんて…あたしもアホだな……)
チラッと時計を確認すると、時刻は午前6時前。
(こんな中途半端な時間で二度寝すんのもなんだし、早めに家出てどっかで時間潰すか…)
あたしは布団から出ると制服に着替えて顔を洗い歯を磨いて朝食を済ませた後、鞄を持って家を出た。
空はまだ薄っすら暗い。
蓮「夏とは言え、やっぱりこの時間はまだ肌寒いな〜」
あたしは腕を摩った。
(でも空気は美味いな…)
蓮「たまには早めに家を出るのもイイな」
足取り軽く通学路を歩いた。
(でも、何処で時間潰すか…)
蓮「……彼処に行こう」
ふとある場所が思い浮かんだあたしは、早足に其処に向かった。
暫く歩くと通学路を少し外れたところに木が生い茂った脇道がある。
そこを少し歩くと、海が見える崖がある。
蓮「着いた」
学校帰りにたまに迅達とも此処に寄る。
太陽が海の真上にあるため光に反射して海の水がキラキラ光ってる。
蓮「綺麗だな……」
この景色を見ている間は、普段の日常生活から解放される。
叔父の事を忘れられる。
蓮「誰もいねぇし、久しぶりに歌おっかな…」
あたしは歌が大好きだ。
歌ってる時だけは、自分の気持ちを素直に表現出来る。
あたしはスッと息を吸って、自分の今の想いを乗せた歌を歌い始めた。