第10章 現れた幼馴染み
〜 ピッコロside 〜
蓮「!?……迅!?」
そう叫んだかと思うと、蓮が目の前の男に駆け寄った。
蓮「おい迅、大丈夫か!?迅!!」
『迅』…恐らくそれはこの男の名だろう。
ピ「蓮、そいつを知っているのか?」
蓮「あたしの幼馴染みだ!おい、しっかりしろ迅!!目ぇ覚ませ、迅っ!!」
蓮は男の身体を揺さぶり、ひたすら名を呼び続ける。
(…なんだ…この感じは……)
必死に男の名を呼ぶ蓮の姿を見ていると、何故か胸の辺りがモヤモヤして、何かわからない込み上げるモノを感じた。
そんな胸の違和感を感じていると、漸く男が目を覚ました。
蓮「………蓮…?」
薄っすらと目を開き、蓮の名を呼ぶ。
「ああ、そうだ!蓮だぞ!!」
上半身だけ身体を起こして蓮を見つめる男。
本当に蓮か今一度確認した男は蓮が答えた瞬間、その身体を抱き締めた。
ピ「…!!」
その瞬間、思考が一瞬停止した。
頭の中が真っ白になり、目の前の光景を呆然と見つめる。
それと同時に、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。
まるで心臓を掴まれ、ギリギリと締め上げられたかのように酷く痛んだ。
迅「ううっ……ひっく…ふっ…ぐすっ……」
蓮「ゴメンな…もう勝手にいなくなったりしねーから……」
そう言って泣きじゃくるそいつの背に手を回し、優しい手つきで撫でる蓮。
その顔は、今まで見た事がないような優しい顔だった。
それを見ると、なんとも言えない妙な気持ちになった。
(何なのだこの感情は…悲しみ?怒り?いや、違う…この気持ちは……)
そう、これは以前悟飯から聞いた感情によく似ている。
そうだ、これはまるで……
ー 嫉妬 ー
第10章 終わり