第8章 再び
しばらくして秀吉さんが部屋を訪ねてきてくれた。
「遅くなってごめんな。信長様は夕刻なら空くと仰っていた。俺が迎えに来るよ」
秀吉さんは片手に書状や書留を抱えていた。
(忙しそうだな…ちょっと申し訳なくなってきた)
「いえいえ、秀吉さんもお忙しいのにすみません」
「なに、気にするな」
そう言って秀吉さんが朗らかに笑った。
(イケメンだし、現代だったら相当モテるだろうな)
私がそんなことを思っていると絢が問題集をやっていた手を止めて言った。
「秀吉さん、ちょっとお願いがあるんだけど…」
「ん、何だ?」
「城下に遊びに行ってもいい?私まだゆっくり見たことなくて…」
絢がそう言うと秀吉さんは渋い顔をした。
「昨日お披露目したばかりだから大丈夫だとは思うが…心配だから供を付けてなら大丈夫だぞ」
「「ほんと!?」」
すると別の声が廊下から聞こえてきた。
「じゃあ俺がいってやるよ。ちょうど城下に用があるしな」
「政宗」
「…じゃあ頼んだぞ政宗」
そう言うと秀吉さんは申し訳なさそうに「すまん、用事を片付けなきゃいけないからな」と言って私たちの部屋を後にした。
「政宗、良いの?昨日も付き合わせちゃったし」
私がそう聞くと政宗は言った。
「昨日は結局何もしてねぇだろ」
「わらび餅は食べたよ?」
「それだけじゃねえか」
そこまでいうと政宗はふ、と笑って言った。
「じゃあ待ってやるから早く支度しろよ?」
政宗が襖を閉めた。
「「はーい」」