第5章 帰城
お茶とお菓子をエンジョイしながら私達はふみさんとさくらちゃんからこの城でのくらしについての話を聞かせてもらっていた。
「ええ!?日の出くらいに起きるの!?」
「はい。冬は日の出前だったりしますよ」
「朝練でもないとそんな早くに起きれないよ…!」
たぶん小一時間くらいしゃべっていた。
「ではそろそろお暇いたしますね」
とふみさんが言って湯飲みを回収したその時、襖の向こうから声がかかった。
「失礼、椿姫はいらっしゃるか」
途端に椿の目が少し鋭くなる。
どうでもいいがこのときの椿の目はとても好きだ。
何というか、かっこいい。
「…ここに」
そう言って椿は襖を開ける。
「御館様が天守にてお待ち故、お呼びに参りました」
(何で椿を…!?)
用件がわからない。
けれど今は信長様の顔を見る心の余裕もないので椿の代わりに行くとも言えず…
「今すぐ行かなければいけませんか?」
椿は男の人に尋ねた。
「早急にお連れするようにとのお達しです」
「…そうでしたか」
男の人がちらとこちらの方を見たのでふみさんとさくらちゃんは少し心配そうな顔をしながら後片付けをして部屋を後にしていった。
椿はくるりと振り返って言った。
「ちょっと行ってくる」
「うん」
私は頷いた。
信長様は悪い人って訳じゃないし。
まぁ呼び出しの理由がわかんないけど…
「ではご案内致します」
そう言って男の人は立ち上がる。
椿は「ちょっと待っててねー」と言って付いて行ってしまった。