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〈イケメン戦国〉紫陽花の咲く季節

第4章 城下


二人が人混みに消えて見えなくなると、一人になって心細さや不安が込み上げてきた。

(絢、大丈夫かな…)

きっと絢は大変な経験をしているに違いないのに、私だけさっきまで楽しく過ごしていたことに罪悪感を感じ、俯いた。

また暫く経って、向かい側がにわかに騒がしくなっているのに気付く。

(どうしたんだろう?)

私は立ち上がって野次馬の人達のなかに混じった。


どうやら向かい側は居酒屋のようだ。

現代でいうヤンキーみたいな人たちがおばあさんに向かっていちゃもんをつけている。

「いやぁ困るよ~、こんな不味い食い物に金払えって言われてもさぁ」

「店主も不在らしいし?バカにしてるとしか思えねぇなぁ?」

「そ、そんなことは決して…」

おばあさんは完全に怯えていた。
対して男達はへらへらと笑っている。

「ほら、行こうぜ」

「へーい」

野次馬の人達がさっとよけて道が出来た。
私は我慢ならなくなり、咄嗟に飛び出した。

「ちょっと!!!!!」

すると男の人達は馬鹿にしたように私をみた。

「何だ、お嬢ちゃん」

私は昔、こういう人たちに絡まれたことがあった。
怖くて声も出なかった。
近くの大人はただ見てるだけだった。
でも、たまたま通りかかった絢が助けてくれた。
私も絢みたいにおばあさんを助けたい!

「代金を、お支払ください」

「んだとぉ?」

「偉そうな口利きやがって」

私は大袈裟にため息をついて言った。

「お金を持っていらっしゃらないなら先に仰ってくださいよ。全く、お金が無いのに飲食店に入るなんて…!仕方ありません、私が払って差し上げますから……お帰りください」

周りの野次馬がざわめいた。

「恥ずかしい話だねぇ」

「あんな娘に払わせる何てなぁ」

するとボスらしき人が青筋を立て、刀を抜き放って言った。

「馬鹿にするのもいい加減にしやがれ!殺されたいのかぁ?!」

(やばい、終わった)

私がそんな覚悟を決めた瞬間、ボスらしき人が地面に倒れた。

「え」

周りがざわめく。


そこには
黒いマントらしきものを着て、
金糸のような髪と、
冴えるような緑と青の瞳をもった人が立っていた。
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