第4章 城下
謀反鎮圧に向かった軍が見えなくなると武将達はそれぞれの用事があるらしく、皆違う方に歩いていった。
私は家臣の方らしき人にまた部屋まで案内してもらった。
腕時計を確認すると17時10分だった。
(6月だからまだ空が暗くないな)
そんなことをぽんやりと思いながら私は縁側に座ってぼうっとしていた。
暫くただただ景色を眺めていると上から声が降ってきた。
「お前、そんなに暇なのか?」
「ま、政宗様…!?」
レディの部屋に無言で入ってくるとは。
政宗様は破天荒、なのかな…?
「おい、呼び捨てで良いって言っただろ。あと敬語もナシってな」
「そ、そうだった…ごめん」
年上で武将様なのに敬語も要らないって物好きな人だなと思う。
「で、どうしたの?何か用事でも?」
私がそう尋ねると政宗は目にもとまらぬ早さで抜刀すると刃先を私の首筋に当てる。
つうと一筋血が流れた。
「あぁ」
政宗は冷たい目で私を見て尋ねた。
「…お前、本当にどこぞの間者じゃねぇんだな?」
恐怖で頭が真っ白になった私にはただ頷くことしか出来ない。
すると政宗は刀をするりと収めて言った。
「そうか。悪かったな、こんなことして」
政宗が私を殺さないとわかり、ひとまず安心した私はふぅ、と息をついた。
昔の人は割と物騒だったんだなぁと思いながら政宗を見ていると政宗は言った。
「そうだ、詫びに城下に連れていってやるよ」
「え、でも、まだ疑ってる方はいらっしゃるようだし、外出たらまずいんじゃないかな…」
「そんなことねぇよ…なぁ、秀吉?」
政宗は振り返り、襖の向こうに話しかける。
すると政宗が全開にしたであろう襖の横から秀吉さんが申し訳なさそうな顔をして出てくる。
「い、いつからそこに!?」
私はさっき刀を突きつけられたことによる恐怖は秀吉さんの登場でどこかに消え去ってしまった。
すると秀吉さんはばつの悪そうな顔をして言った。
「すまない、通りかかったらたまたま政宗がお前に刀を突きつけてて…気になって聞いちまった」
「そ、そうだったんですか」
「ああ、申し訳ない。お前が間者である線も大分薄くなったし、政宗と離れない約束を守れるなら城下行きを許可する」
そう言うと秀吉さんは懐から小さな袋を取り出した。
「これ、小遣いだ。もってけ」
そう言うと秀吉さんは微笑んだ。