第2章 安土城
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「行っちゃった…」
私はぼそりと呟いた。
「こーらら、落ち込むなって。すぐ帰ってくるって言ったろ?」
豊臣さんが私の肩をぽんと叩いて言った。
軍議のときとかすっごく私達の事疑ってたのに、ちょこちょこ優しいな、豊臣さん。
「そうですね。ありがとうございます」
「あの子はこんなので死ぬような弱い奴なわけ?」
家康さんが前を向いたまま私に尋ねる。
「そんなわけないでしょ…!」
私がそう噛みつくと家康さんはこちらを振り返らず言った。
「じゃあ心配いらないんじゃないの」
「…!」
最初はなんて失礼な男の人って思ってたけど…、実はそうじゃないのかも…?
「ありがとうございます、家康さん」
私がそうお礼を言うと家康さんはちらりと目線をよこして言った。
「俺は別に何もしてない。…というかやめなよ、さん付けと敬語。肩が凝るんだけど」
「えっ、でも、家康さんは武将ですし、名字より先に名前を知ったのでこの呼び方になっただけでして…」
「…わかんない?でっち上げとはいえ織田の姫が俺に敬語使ってどうすんの」
家康さんは呆れたようにため息をついた。
姫だったら敬語を使わないもんなんだろうか…?
「わかりました。あ、わかった…家康」
私がそう返事をすると隣から伊達さんと豊臣さんも隣にやって来て声をかける。
「椿、俺も呼び捨てでいい。敬語もなしだ。わかったか?」
「え、う、うん」
「まだお前を信じているわけではないが…さっき家康が言った通りだ。俺も名前で呼んでくれ」
「はい、秀吉さん」
私が返事をすると秀吉さんは頷いた。
「絢なら大丈夫だろ。俺の早駆けに一日もかからず慣れた奴だぜ?」
政宗がにかっと笑って言った。
「うん……そうだね」
私は安土の空を見上げて、親友の無事を改めて祈った。