第10章 碁
「信長様って実は暇なんですかね」
私は隣にいた三成さんに尋ねた。
「お忙しい方ですよ」
三成さんはとてもいい笑顔で答えてくれる。
いや、忙しかったら現代の情報を得るために自室に私なんかを呼ばない。
まあいいや。
「あとどれくらいで書庫に着きますか?」
「あちらの角を曲がればあと少しですよ」
なにぶんこの城は大きいので少しが本当に少しなのか疑わしいところだが三成さんを信じよう。
「ところで絢様はどうして書庫に?」
「うーん…」
私はちょっと考えてみる。
先日の戦のこと、城下のこと、城での暮らし。
「この時代と安土の人たちの暮らしについて知りたいなと思いまして」
「そうでしたか。私で良ければお聞きしたいことがありましたら聞いてくださいね」
三成さんはまたとても良い笑顔で言った。
そんな話をしているうちに気が付いたら曲がり角である。
「ちょっと手伝いましょうか?」
「お気遣いありがとうございます。大丈夫でs」
バサバサバサッ
本を沢山抱えていた光成さんはなぜか知らないがバランスを崩し、抱えていた本半分ほどが床に散乱した。
(三成さん実はだいぶどんくさいんじゃ…?)
「私も少し持ちますね」
「いえ!すぐそこですし大丈夫です」
「大丈夫ではなかったと思いますよ」
「言われてみればそうでしたね」
私がそう言うと三成さんは観念したように数冊私に預けてくれた。