第9章 褒美
政宗が台所で料理するのを眺める。
(いや手際よすぎ…すごい…)
時代が時代なのでおこした火で料理しているのだが火力調整できないなかどうやってしてるんだろうか。
「もう少し待ってろよ」
「はーい」
伊達政宗といえば自ら他の武将をもてなしていたことで有名だ。
楽しみだなあ。
「ほらよ」
政宗はお椀に魚と山菜をご飯に混ぜて醤油で味付けしたものを渡してくれた。
(混ぜ込みご飯と炒飯の間みたいなやつ来た)
「ありがとう」
ひと口ぱくりと食べてみる。
「!!!」
「旨いだろ?」
政宗は得意気に笑った。
私は一生懸命咀嚼して飲み込んでから盛大に頷いて言った。
「美味しすぎる!ありがとう…!」
「冷める前に食っちまえよ」
はーいと返事をして食事を再開する。
私は時間をかけずぺろりと平らげてしまった。
「ご馳走さまでした」
「おう。午後も励めよ」
「はーい」
女中さんはあわあわしてたけど私がお皿を洗って片付けをし、鍛練場に戻った。
腕時計は1時を指していた。
・──・
そのあとはあんまり覚えていない。
疲れた体とひたすら格闘していたと思う。
そして残り150回のところまで来た。
(死ぬ…)
1000回だ、じゃないわ。
明日絶対起き上がれない自信しかない。
「お邪魔しますね」
(この声は三成さん…?)
私は首だけ動かして入り口の方を見た。
「あ、三成さん」
「こんばんは、椿様。励んでいらっしゃるのですね」
三成さんはにこりと笑った。
癒し系アイドルのようなスマイルに私の心も少し癒されたような気がする…。
「先程、椿様にとこれをいただきました」
そう言って三成さんは水の入った竹筒を渡してくれた。
大変ありがたい。
「ありがたいです…」
私はそれを受けとり喉を潤す。
またちょっとだけ元気が沸いた気がした。
(三成さん回復スキルの持ち主なんじゃ…?)
「では私は失礼しますね。僭越ながら応援しております」
そう言って三成さんは道場にいた数人に声をかけてからここを去った。