第9章 褒美
「では振ってみろ」
信長様は私の横についた。
ぶん、と振ってみる。
「振りが甘い。最後は止めろ。それから…」
信長様は何回か実際に私が振ったときの修正点を教えてくれた。
20回目辺りでようやく体重ののせ方を掴んだような気がした。
「掴んだか」
「少し…?」
私は首を傾げながら答えた。
もう既に疲れ始めてるし、手も少し痛い。
「1000回だ」
「へ?」
冗談か何かだと思ったが信長様は至って大真面目な顔をしている。
「1000回振れ。明日また見てやる」
そういうと信長様は道場から去っていった。
(嘘でしょ…)
私は自分の手のひらを見つめた。
ちょっと赤い。
このままだと豆ができると思い、綺麗な手拭いを裂いて掌に薄く巻いた。ずれたらまた豆ができる原因だし一重でいいよね。
私はもう一度木刀を握りしめた。
(500回振ったらお昼にしよう)
・──・
「173、…174」
思ったより、というか大分きつい。
既にへとへとだ。
時間がたってから他の人が道場に入るようになったので私は隅っこでひたすら木刀を振っていた。
「姫様、朝から振っていらっしゃるんだとか」
「まだまだ型は甘いが、今日から始められたのならこれからだろう」
「褒美に材や着物ではなく、武芸の指導を願うとは…我々も負けぬよう励まねばな」
信長様の部下だからだろうか、女子には無理だということを云う人はいなかった。
まあ信長様が教えてるんだし、いないだろうね。
「…200…!」
そんなことを考えているうちに200回振ってたので一旦休憩することにした。