第6章 chapter 6
黙ったまま、実家暮らしだと言う智くんの家へ二人で向かう。 二人の間に流れる沈黙が、緊張や戸惑いを色濃くしていて。何故だか、笑えてきてしまう。
声には出さないけれど、きっと智くんだってそうなんだろう。 だからさっきから、ずっと口元を手で覆っている。
成人済みの男子二人が、こんな事で何故緊張しているのか、不思議でたまらなくなってくるんだ。
そうこうしている内に、智くんの立派な一軒家へ辿り着いてしまっていたみたいだ。
「本当に良いの…?」
この後に及んでなんだが、どうしてもそればかりが気になって仕方ないのだから、口に出しても文句はないだろう?
そんな俺に、智くんは呆れてなのか、ふにゃんと笑うと鍵穴に鍵を差し込みながら答えた。
「良いよ、今日と明日は両親は旅行中で居ないし…弟もいるんだけど高校の部活の合宿だとかで明後日まで帰ってこないから」
「そ、そっか…」
「さぁ、入って…?」
智くんに誘導されるまま、俺は大野家へと足を踏み入れた。 こんなシーンは今までにだってあったはずなのに、智くんととなると、何故こんなにも緊張してしまうんだろう。
俺は、女の子との経験はあるけれど男の子とは、智くんが初めてだ。 そこの所、智くんはどうなんだろう…まさか経験済みとか。
そこでまた、あの噂が頭を過ぎって、俺は、邪念を振り払うように頭を振った。
そんな中、智くんの部屋に案内された。
「ここが僕の部屋…」
「お、邪魔します…」
ゆっくりと足を踏み入れて、智くんが普段生活している空間を目に焼き付けていく。
智くんの部屋にあるのは、たくさんの絵と写真。 主に海や魚の写真や絵が多かった。
辺りを見回して、感心していると智くんがベッドの上へ、卑猥な音を立てながら腰を下ろした。
「…言ってなかったんだけどね、僕こうなるのを期待して…付き合い初めてからずっと後ろの準備してたんだよ」
「え、あ…」
一瞬、思考が止まったけれど即座にそれも追いついて。智くんの言葉に生唾を飲み込んだ。
「翔くん、もう我慢しないで…僕だってもう我慢したくないよ」
「そう、だよね…もう我慢なんかさせない」
「…あっ、翔くん」
俺は、少し乱暴に智くんの事を、ベッドの上へ押し倒した。
そんな物欲しそうな瞳されたら我慢も何もないのに。