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薔薇の花が咲く頃に【気象系BL】

第4章 chapter 4



【10年前】

絵の事が大好きな彼と知り合ってから、約半年。 彼と話していると、時間が経つのを忘れるくらい楽しくて。

性格や、好みが違うだろうと思っていたけれど、智くんはどんな話も、どんな事でも受け入れて聞いてくれた。

そんな彼だからこそなのかもしれない。 俺が、彼のいる美術室に足繁く通うようになって。

彼を見る度に湧き上がるこの感情が、ただの友情を通り過ぎていることに気付くのには、そう時間は要らなかった。

―― 俺は、智くんが好きなんだ――。

本来、女性に抱くはずのそれと、同じだったんだ。

そんな自分の気持ちを自覚してからというものの、特に智くんとの距離が変わるようなことはなくて。

毎日、講義が終わると真っ先に美術室へ向かって、智くんと夜まで話していた。

「智くん、どう? 絵、捗ってる?」

「あ、翔くん…どうだろう、まぁまぁかな」

「へぇ、智くんにしては珍しいじゃん」

「そりゃあ、僕だって人間だからね…」

「それもそうか」

「そうだよ」

智くんは、最初こそあんなにたどたどしかったけれど、こうしてしつこく通う俺に呆れてなのか、絆されたのか。 今では心を開いてくれていると感じている。

最初の会話が済むと、智くんは絵筆を持ってキャンバスに向き直る。 俺は、そんな真剣な智くんを見るのが好きだった。

いつもは、ふにゃんと、ふわんとしている彼が絵の事になると真剣になる姿。 ギャップ萌えって言うのかな、こういうの。

二面性がある智くんの虜に、なってしまっていた。 けれど、この気持ちを伝えるつもりは無い。

伝えたって実らないと、花なんて開かないと思っているから。

俺は、このまま智くんの隣で、智くんの絵を見ていられるだけで充分なんだ。








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