第15章 その瞳の燐光
「成程、この船は始めからアメリカ行きではなかった…と…」
「君らのせいで思ったよりたくさんの人間が生き残った様だけど…小生怒られちゃうかな?」
口では“怒られちゃうかな?”など、自身の身を案じるような事を言うが、実際アンダーテイカーにとって実験の結果などどうでも良かった。
ビザール・ドールはあくまでなし得たい実験をしている過程で生まれた副産物にすぎない。
そんなモノが評価されようとされなかろうとアンダーテイカーには関係なかった。
「ますます見逃せなくなったワネ。」
「ッスね。死神が“死”を歪ませるなんてありえなさすぎ!つっても眼鏡ないし、たまにいる“離脱組”ってヤツ?」
ビザール・ドールはアンダーテイカーにはどうでもいい代物でも、死神や人間界にとっての絶対的な“理(ことわり)”を歪ます、あってはならない存在。
となるとアンダーテイカーをこのまま野放しにする事はできない。
「なんだってイイワ、とにかく死神による人間界への生死に関わる干渉はルール違反!!」
「それで謹慎くらってたセンパイが…ソレを言っちゃうんだ……」
「ロナルド!ウルサイわね!動く死体の仕組みを吐かせるためにもふん縛って上に突き出すのが手っ取り早い…でもそれと…ルール違反以上に乙女の顔に傷をつけた罪!いくらイケメンでも許されないワヨ!!」
「(あっ……!!)」
「おっと……」
グレルはデスサイズを振り上げ飛びかかると、アンダーテイカーはマリアンヌから離れて持っていた卒塔婆で煩く鳴り響く刃を受け止めた。
「後ろ取ーーーーーーーっ…だぁぁぁぁぁぁ!!」
グレルに気を取られてる隙を突こうと、ロナルドは悪い笑みで背後から攻撃をしかけるが、まさかのセバスチャンにより蹴り飛ばされてしまった。
「ちょっと!セバスちゃん!どーゆーつもり?!」
お互い動く死体について探っていたのだ。
この離脱組を片付ける事に関しての利害は一致すると思っていたグレルは邪魔をしてくるセバスチャンが理解できなかった。