第15章 その瞳の燐光
「氷山にぶつかったとなると船はそうはもたない。2時間もたたないうちに沈没するだろう。」
「(アンダーテイカーさん……)」
マリアンヌの手を引きながら少し早歩きをするアンダーテイカー。
氷山にぶつかるとは想定外だった様だ。
しかし、長い廊下を歩いているととある人物に声をかけられた。
「ちょっと、ちょっとそこの君?悪いけど、コレを運ぶの手伝ってくれないかい?」
「ん〜?小生の事か〜い?」
振り向くとそこにいたのはドルイット子爵だった。
「(…………)」
「あぁ、君は確か、学会の関係者だったね?すまないが手伝ってくれ。」
ドルイットが指さしたもの。
それは、リアンが造り出した“完全救済を無効化する装置”だった。
それを何故ドルイットが。
「ヒッヒッ…仕方ないね〜」
なんだか面白い予感しかしてこなかったアンダーテイカーは、あっさりとその“笑い”の誘惑に負けてしまうと、予定していた高みの見物をやめ、ドルイットについて行ってみる事にした様だ。
「マリアンヌ?なんだかこっちの方が面白そうだ。ついて行ってみよう。」
「(は、はい……)」
アウローラ学会の研究、オシリスという謎の企業からの実験、動く死体……自分ではまったく勝手が分からない状況だ。
マリアンヌはアンダーテイカーの言う通りについていく事しかできないため、素直にイエスと答えた。
「おや、君は新入りかい?美しいヘーゼルの瞳のお嬢さん…」
「子爵…失礼を承知で申し上げるが、彼女は小生の大切な宝物なんだ。触れるのあれば手をかすのは無かった事にしよう…」
ドルイットはマリアンヌに気づくと、その美貌を抜かりなくチェックするが、それはアンダーテイカーにより厳しく制止をされた。
「おっと失礼。私は彼女に挨拶をしただけさ。それじゃあ君たち、早速運び出してくれたまえ。」
アンダーテイカーの鋭い声色に何かを感じたのか、いつも強気のドルイットだが、すぐにマリアンヌから視線を外し、ワイングラス片手に歩き出した。