第13章 愛しているから不安なのです
「………」
メガネを外してベッドのサイドテーブルに置くと、ロナルドはごろりと寝転ぶ。
ソフィー・スミス。
今まで遊んできた女とは、まったく違うタイプの女だった。見た目はおとなしそうなのに、積極的で挑発する様なサディスティックな言葉づかい。
見た目とのギャップにロナルドは久々に新鮮な興奮を覚えたが、彼女は2日後に死ぬ運命。
「せっかく出会えたのに勿体無いな〜」
死神が死を取り消す事ができるのは、その人間が「世界に有益となり得る存在」だった者のみ。
しかし、管理課に所属する石頭こと、ウィリアム・T・スピアーズに言わせれば、“人間にそんな価値のある者など皆無に等しい”だ。
そのためシネマティック・レコードで対象者の人生を審査するなど、形式的なものにすぎないのだ。
そのため、ソフィーの死は絶対だ。
しかし、ソフィーは明日も来ると言っていた。
「んじゃ、まぁ…人生最後にいい思いをさせてあげるっていうのも、男の俺の役割って事かな?」
仕方ないとばかりに盛大なため息をつくと、ロナルドはアルコールの酔いと、女を抱いた後の心地良い気怠さに身を任せてそのまま眠りについた。