第12章 ヤブレ血マミレ処女航海、いざ出航
ー4月17日ー
まだ若干肌寒さが残るが、すっかり春めいてきた4月。
アンダーテイカーとマリアンヌは、サウサンプトン港に到着していた。
「アンダーテイカー様と、お連れ様でございますね?お部屋までお荷物お運び致します。」
「あぁ、宜しく頼むよ。」
馬車から降りると、これから乗る予定の豪華客船、カンパニア号の従業員がアンダーテイカーを出迎えて荷物を運び出した。
「流石一等室だ。荷物も運んでくれるなんて貴族並みの接客だね〜」
「(アンダーテイカーさん…)」
馬車に積まれた荷物を台車に積むと、ビシッと制服を着こなした3人の男がゾロゾロと運び出した。
荷物の殆どはマリアンヌの服と装飾品だ。
「それにしてもすごいね〜こんな豪華客船に乗るのは久しぶりだ。」
「(わ、私は初めてなので…緊張します。)」
マリアンヌはビャクの入ったバスケットを持ちながらアンダーテイカーとはぐれない様に服の裾をギュッと掴んだ。
「緊張する事はないさ、せっかくだからこの豪華客船カンパニア号の処女航海を楽しむといい。例の集会は…19日だから、ね?」
「(は、はい……)」
例の集会。
マリアンヌは例の集会も、その集会の裏に隠された実験の真実も全て知っている。
でも、今更どうのこうのと考える事など無いのだ。
私はいつまでもアンダーテイカーさんと一緒にいたい…
マリアンヌの望みはただ1つなのだから。
それにしても、港は客船に乗り込む客と、見送りに来た人間、豪華客船の処女航海の船出を見に来た野次馬達でごった返していた。
「すいませーん!!ちょっと通してくださーい!!」
はぐれない様にアンダーテイカーの裾を掴んで歩いていたマリアンヌだったが、後ろから人混みをかき分けて船に乗り込もうとしていた客とぶつかってしまうと、マリアンヌは掴んでいた裾を離してしまった。
「(あっ……!!)」
アンダーテイカーはこの人混みでマリアンヌが掴んでいた手が離れてしまった事に気づかなかった様だ。
どんどん人に紛れて見えなくなってしまう。
まずい……
しかし、そんなマリアンヌをよそに、ぶつかってしまった男はくるッと振り返ると近づいて来て声をかけてきた。