第10章 その死神、激情
唇が離れると、アンダーテイカーはゴロリと横に転がり、頬杖をつきながらマリアンヌの額にキスをする。
「…マリアンヌ…大丈夫かい……?」
アンダーテイカーも十分に満足をしたのだろう。
身体は汗ばみ少し息を上げているが、先程の余裕を失くし歪むような表情は消えている。
今は柔らかくマリアンヌに微笑みかけていた。
「(は…はい…なんとか……)」
マリアンヌも身体はクタクタだったが、アンダーテイカーの微笑みにつられるように笑顔を見せる。
思いもよらぬ出来事で、愛しいアンダーテイカーに嫌われてしまったかと思ったマリアンヌだったが、パン屋の店主のおかげで無事に誤解は解け、こうしてまた愛し合う事ができた。
自分はアンダーテイカーの愛さえあれば幸せだ。
今回の事で、アンダーテイカーの愛が自分にとってどれだけ大きなモノであるか思い知らされた。
マリアンヌはアンダーテイカーから愛されていればそれでもう十分だった。
そう、それ以上に望むもの等、ありはしないのだ。
自分に微笑みかけるその表情に、マリアンヌは改めてそう思った。
すると、アンダーテイカーがマリアンヌの頭を撫でながら何か閃いたかの様に話しだす。
「マリアンヌ?明日は出かける様な仕事は入ってないんだ。だから1日休みにしよう。」
「(明日、お店お休みにしちゃうんですか?)」
「そうだよ。その顔は何も分かってない様だね?」
「(………)」
何も分からずキョトンとしているマリアンヌに、アンダーテイカーはクスリと笑うと、頭を撫でたまま続ける。
「明日は2月14日、バレンタインデーだ。ニナの所へ連れて行ってあげよう。好きな服を好きなだけ仕立ててあげるよ。そして夜はどこかディナーへ出かけよう。マリアンヌの食べたい物を食べに行こう。」
「(え…あの…その……)」
急な提案に戸惑いの表情を見せるマリアンヌだったが、アンダーテイカーはニコニコと楽しそうだ。