第2章 死神とゲーム♪
今日は街外れの郊外にある小さな教会で、人知れずひっそりと葬儀が執り行われていた。
近隣の孤児院で亡くなった子供達の合同葬儀だった。
アンダーテイカーは基本依頼があればどんな葬儀でも引き受ける。マリアンヌも今日は手伝いをするためについてきていた。
「人生最後にして最高のセレモニー」
そう言ってアンダーテイカーは毎回とても丁寧に死者をあの世まで見送る。
いつものおどけた姿は一切見られない。
穏やかに慈しむように死者を見送る葬儀屋の正体が、死神だなんていったい誰が想像できようか。
死神らしからぬ神々しささえ感じるほどだ。
マリアンヌは、アンダーテイカーが、演技ではなく心から死者を見送り葬儀を執り行っているのを知っている。
ツンと冷たい冬の風で揺れる銀髪から覗く黄緑の燐光が、両親からの愛情を受けることなくこの世を去った子供達の魂を優しく見送っていた。
それにつられてマリアンヌも思わず一筋の涙をこぼしてしまう。
マリアンヌは、そんな姿のアンダーテイカーも大好きだった。
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「ありがとうございました…」
孤児院の寮母と教会の神父が頭を下げる。
葬儀が終わり、お礼を受け取ると、用意された馬車が2人を待っていた。
乗り込もうと思ったところでふいに御者から話しかけられた。
「お客さん、行きは舗装された道を遠回りで来たんだろ?俺、足場の悪い道だけど、近道知ってんだ。30分は早く戻れると思うけどどうする?」
「……30分か。マリアンヌ、どうするかい?」
もちろんマリアンヌの答えなど決まっている。
──どうぞ仰せのままに──
いつもの笑顔でマリアンヌは受け答えをすと、アンダーテイカーはどうしたもんかと考え始めた。
確かに行きはなだらかな舗装された道を来たが、遠回りの道だったため2時間以上かかってしまった。
今日は冷え込みも激しく、出来ることなら早く帰ってマリアンヌをベッドで抱いて寝たい。
足場が悪い道だと馬車は揺れるだろうが、それは致し方ないだろう。
「……じゃあ悪いけど、近道で頼むよ。」
「あいよ!乗ってくれ。揺れるからちゃんと座っててくれよ。」
2人を乗せると、馬車はロンドンの店に向かって走り出した。