第8章 死神との生活
ただ静かに頷くマリアンヌを確認すると、アンダーテイカーはホッと胸をなでおろし差し出していた腕を伸ばした。
アンダーテイカーの腕がそっとマリアンヌを包み込む。それは、まるで硝子細工を扱うかのように優しく、繊細に抱き寄せると、少しだけ力を入れてギュッと抱きしめた。
「……………。」
マリアンヌはアンダーテイカーが思っていたよりも華奢で、でも柔らかく心地いい感触だった。
その心地よさに流されて、思うがままにしてしまいたくなる衝動が走る。
このままキツく抱きしめて、全身をくまなく愛撫をし、激しく繋がりたくなってしまう。
でも、今許されたのは“ココ”までだ。
だがそれだけでも大きな1歩。
触れる事を拒絶されないのであれば、いずれはこの自身の中で切なく想う気持ちを伝えられるはすだ。
なんとか疼く衝動をセーブすると、胸元に顔を埋めているマリアンヌの後頭部を撫でながら髪の上にキスを落とした。
「マリアンヌ…小生はずっとこうしたかったんだ。許してくれてありがとう…嬉しかったよ。」
「(………………)」
優しく触れ、包み込んでくれたアンダーテイカーの腕の中は、想像していた以上に温かく心地よかった。
その繊細にマリアンヌを包み込む腕の中で優しさ溢れる温もりを感じてしまえば、マリアンヌはもう自分の気持ちをおさえる事ができなかった。
自分はアンダーテイカーの特別な存在になりたい。
いつまででも側にいたい。
触れてもらえて本当に嬉しかった。
次々にでてくる素直な気持ち。
そんなアンダーテイカーに対して抱いているこの気持ちは、おそらくは特別な存在として「好き」という意味なんだろうとマリアンヌは気づく。
その証拠にさっきからマリアンヌの心臓は煩く高鳴りっぱなしなのだ。
ー私は、アンダーテイカーさんが好きー
しっかりと自覚した想いを何度も心の中で呟いた。
いつかこの想いを伝えることが出来るだろうか。
マリアンヌの自覚したばかりの想いはまだまだ未熟で臆病だ。
この気持ちを伝えるにはおそらく時間が必要だ。
だが、今はこの幸せな温もりを全身で感じていたい。
マリアンヌもアンダーテイカーの背中に腕を回すと、か弱い力で一生懸命抱きついた。