第7章 死神との出会い
──年があけた真冬のロンドン──
凍てつく寒さがより一層寒くなる中、天気は昨夜から雨だった。
空は一面に真っ黒な分厚い雨雲が広がり、冷たい雨を途切れることなく降らせていた。
この様子だと、今日1日やむことはないだろう。
そして店の中では珍しくビャクがアンダーテイカーの膝の上に乗り2人きりだ。
マリアンヌの姿はない。
静かな店にはパチパチと暖炉の火が燃える音と、時計の針の音が無機質に響いていた。
『クルルル……』
「なんだいビャク?何故マリアンヌが店に出てこないのかって言ってるのかい?」
『…………』
「ヒッヒッ、それは秘密さ〜。」
実のところマリアンヌは店に出てこないのではなく、出てこれなかったのだ。
愛しいマリアンヌを毎晩抱きたくても、女には月のものがある。
当然だがその間は男女の睦み合いは“おあずけ”だ。
アンダーテイカーとて、体調が優れなくなる生理の最中に無理矢理抱くほど節操なしてはない。
しかし、7日程の“おあずけ”期間が終了すれば、紳士の仮面を被ったアンダーテイカーは再び野獣と化すのだ。
昨夜は“おあずけ”期間が終了した、アンダーテイカーにとっては待ちに待った夜。
マリアンヌは野獣と化した死神に一晩中激しく愛されていた為、まだベッドで夢の中だった。
起きてくるのはおそらく昼過ぎだろう。
「こんな日は思い出すね……マリアンヌと出会った日の事を。」
アンダーテイカーは雨に濡れる窓を見つめながらなんだか物憂げだ。
ビャクはそんなアンダーテイカーが珍しいのか、しげしげと見つめている。
「なんだいビャク……聞きたいのかい?小生とマリアンヌの話を…」
『クルル…』
あの美人で優しいマリアンヌが何故こんな変態葬儀屋の側にいたがるのかずっと疑問に感じていたビャクは、小さく鳴いて答えた。
「そうかい…聞きたいかい。マリアンヌもまだしばらくは夢の中だろうし、特別に話してあげようかね〜」
アンダーテイカーはビャクの背中を撫でながら、マリアンヌとの出会いを語り始めた。