第1章 からいもの
どうやら俺に唐揚げを作ってほしいらしい美穂を部屋に残して、仕事へ向かう。
俺だって、年がら年中美穂に付き合えるほど暇じゃない。
(そもそも、500年も先の料理なんか分かるわけないだろ。......からあげ?)
「.........ス」
(鶏肉美味しく揚げました、って大雑把すぎる)
「.........す」
(何かこう......もっとあるだろ。味とか)
「.......やす!」
(手掛かりなんか、有って無いようなもんじゃないか)
「家康!」
「わっ」
首にガクンと衝撃が走って、一瞬、何が起こったのか分からなかった。
気が付いたら政宗さんが俺の首を羽交い締めにして、頭をぐしゃぐしゃに撫でていた。
「や..っ、止めてくださいよっ」
「俺が呼んでるのに上の空でいるほうが悪い」
何とか抜け出して政宗さんを睨むと、政宗さんは飄々と笑っていた。