第2章 姉妹2※
窓枠に頬杖つき遠くをぼーっと眺める。
行けども行けども緑、緑、緑。代り映えのない景色にそわそわとした気持ちもひと段落した。
退屈しのぎにと持ってきた本はひどい揺れでとても読む気にはなれず、コバトは所在なげに毛先をねじる。
帝都へ行く主人のため、早朝にも関わらず熱心に梳かしていた侍女を思い出し笑みがこぼれる。
(それにしても……)
「結界の外ってもっと物騒なところだと思ってましたわ」
コバトと同じように外を眺めていたピージオが呟く。
「んっ、そうですね」
思っていたことを先に姉に言われてしまい、慌てて言葉を飲み込み、肯定を返す。
「魔物と戦ってるところ見たかった。って思ったでしょう?」
イタズラっぽい笑みを浮かべながら振り向くピージオ。
「そんなこと。魔物になんてあわない方がいいに決まってますよ」
否定の言葉を述べながら姉に背を向けてガラスに映る顔を眺める。
(なんで姉さまは私の考えていることわかるのかしら? そんなにわかりやすい顔してたかしら?)
歪んだ不満顔の向こう、変わらぬ景色を眺めてため息をつく。
そして変わらないと思っていたそれの違和感に顔をしかめる。
(気のせいかしら?少し速度が上がったような。)
--ガタンッ
直後、馬車が大きく傾く。
その動きに耐えることができず、コバトの額は音を立てて二度ガラスに叩きつけられる。
「痛っ!……なに?」
痛む額を抑え、進行方向にある小窓を見ようと体を乗り出せば
見えない力に引かれ背もたれに押し付けられる。
「大丈夫、コバト!!」
隣のピージオがすぐにコバトを抱え込む。
「おでこ赤くなってるじゃない!!」
コバトの額を撫でつつ、いつになく慌てた姉の様子にコバトは緊張から体が力むのを感じた。
「すんません、お嬢さん方。でっかい石踏んじまいました~」
御者を務めるアビの緊張感のない声がかかる。
それに安心したのかピージオがコバトを包む力を緩める。
「気を付けてくださいな」
「す~ませ~ん」
とても雇い主の娘に対する態度と思えない謝罪だったが、
馬車の中を落ち着かせるには十分な効果があった。