第1章 太宰さんがサボる理由を知った日
「あの包帯無駄使い装置は何処へ行った!」
今日も今日とて、国木田さんの怒声が事務所に響き渡る。
“太宰さんが消えるのはいつもの事なのでは、”と思いつつも、こんなに怒っている国木田さんにそんな事が言えるはずもなく、今日も僕は“あはは、”苦笑いをする。
「あはは、なんて笑っている場合かッ!あの唐変木め、いつもいつも気付いたらふらふらとどこかに消えおって、!たまには自分の仕事くらい自分で、」
まるで母親か先生みたいだな、なんて思っていたらギロリと鬼のような形相で睨まれてしまったので急いで話題をかえる。
「そ、それなら太宰さんが消えないようにずっと見張っとけばいいのでは……?」
そうすれば太宰さんが消えないので回ってくる仕事も減るし、何より国木田さんの胃が大分穏やかになるはず、!
そう思って案を出すが、事務所の奥の方から“無駄だね。”というどこか幼い声が聞こえてくる。
声に釣られ、体を振り向かせるとそこにはいつもの様にビー玉を興味津々といった様子で見ている乱歩さんがいた。
「太宰を見張る筈が太宰に振り回されて疲労、その隙に太宰が逃げ出すのは目に見えてるね。」
確かに、そうなるだろうなと思った。
太宰さんはとにかく頭が良い。
その良すぎる頭を使って僕達で遊んだ挙句、チャッカリ逃げ出す、なんてきっと簡単だろう。
「それよりも誰でもいいから駄菓子買ってきて〜。もう備品が無いんだよね。」
「は、はい。行ってきます!」
勢いでつい返事をしてしまったが自分がこのヨコハマに来たのも最近だということを思い出す。つまり、場所が分からない。
「待て、小僧。貴様は入社したばかりで行きつけの駄菓子屋を知らんだろ、今日は俺が案内してやるから着いてこい。」
「はい!」
困ったように国木田さんを見れば察してくれたようで、案内をしてくれるらしい。
美味しい駄菓子、沢山あるといいな…